東京地検特捜部は17日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の元理事・高橋治之容疑者(78)を、受託収賄の疑いで逮捕しました。
さらに、大会スポンサーだった紳士服大手『AOKIホールディングス』の前会長・青木拡憲容疑者(83)、副会長で前会長の弟・青木寶久容疑者(76)、子会社のAOKIの前社長・上田雄久容疑者(40)が、贈賄の容疑で逮捕されました。
関係者によりますと、AOKI側は、2017年秋ごろ、高橋容疑者が代表を務めるコンサルタント会社『コモンズ』と契約を結びました。翌年、AOKI側は、組織委員会とスポンサー契約を結び、公式ライセンス商品を販売します。
高橋容疑者は、スポンサーやライセンス商品の契約などをめぐって便宜を図るように依頼を受け、その見返りに、AOKI側から合わせて5100万円を受け取った疑いが持たれています。
高橋容疑者は、1967年に大手広告会社『電通』に入社し、その後、専務や顧問を歴任。スポーツ事業部の部長も務め、日本のスポーツビジネスの第一人者として知られています。高橋容疑者を知る人は、その影響力の大きさについて、こう話していました。
組織委の元職員(電通出身):「スポーツをビジネス化する仕組みを作りあげたのが高橋さん。IOCと世界のスポーツ団体の中では圧倒的に予算と力があるFIFAの上層部とも過去からつながりを持っていて、個人的な人脈もある」
関係者の話では、高橋容疑者はIOCのバッハ会長と直接電話ができるほどの関係で、影響力が強かったといいます。
逮捕前、高橋容疑者は取材に対し「コンサルタント契約はAOKI側から持ち掛けられ、受け取ったお金は、オリンピックとは関係のない正当な報酬だ」と話していました。一方で、関係者によりますと、贈賄側の青木容疑者は、逮捕前、特捜部の任意の聴取に対し「元理事の人としての力に期待した」と答えたといいます。
前会長ら3人の逮捕について、AOKIホールディングスは、「厳粛に受け止めており、引き続き、当局の捜査に全面的に協力してまいります」とコメントしています。
スポーツ評論家の玉木正之さんは、組織委員会で働く職員が定義される“みなし公務員”という立場がポイントだと話します。組織委員会の理事は“みなし公務員”と規定されているため、職務に関する金品の受け取りは禁じられています。
スポーツ文化評論家・玉木正之氏:「組織委員会で決算したときに、1兆4000億円くらいお金を使っているわけだが、それの50%以上が税金。国からの税金と東京都の税金。そこで働いている人は、公務員と同じだと扱われている。個人的にもらったお金は、賄賂であるという認定がなされる。スポーツは公共財だと。公共のものでみんなで作ってるもの。そこで動くお金を、言葉悪いが“上前をはねた”ということがあったら、スポーツを運営している人、あるいはスポーツ団体に対する背任行為だと言える」
カネの流れは、ほかにもあります。関係者によりますと、2018年にAOKI側から電通の子会社を通して、高橋容疑者の会社に2億3000万円が渡っていたこともわかっています。高橋容疑者は、特捜部の任意聴取に「2億3000万円は、過去のコンサルティング料の未払い分だった」と説明していたといいます。特捜部は、こうした金銭の流れについても、実態解明に向けて捜査を進めるとみられています。
東京大会をめぐる関係者の逮捕を受け、招致の際、都知事だった猪瀬氏は、こう述べました。
招致時の都知事・猪瀬直樹参議院議員:「透明性を欠いていた大会組織委員会のうみが、こういう形で出てきたのではないか」
小池都知事は、こう話しました。
東京都・小池百合子知事:「報道については承知いたしております。誠に残念な事態でございます。都としてこれからどのような形に捜査が進展するのか注視していく。(Q.東京大会はコロナ禍で開催にこぎつけた。レガシーに与える影響をどう考える)それだけに残念だと思っております」
◆社会部・西前信英記者の報告です。
(Q.家宅捜索から3週間での逮捕となりましたが、検察はどのように事件を見ているのでしょうか)
ある検察幹部に話を聞いたところ、今回の事件について「五輪の商業化が生んだもの」との見方を示していました。逮捕された高橋容疑者は、東京五輪の招致段階からかかわっていて、開催が決定してからは、組織委員会でスポンサー集めを担当していました。大会開催には多額の費用がかかるため、スポンサーから金を集める“仕切り役”となっていました。高橋容疑者は、組織委員会の中でも絶大な影響力を持っていたということです。
一方、組織委員会の役員や職員は、もとは民間出身でも、その公共性の高さから“みなし公務員”とされているため、職務に関して便宜を図るのは禁止されています。多額の税金が費やされた五輪で、高い倫理観が求められるにもかかわらず、元理事をめぐって不透明なカネの流れが出てきたことから、今回、特捜部がそこに切り込んだ形です。
(Q.今後の捜査のポイントは、どういったところにあるのでしょうか)
高橋容疑者の容疑は受託収賄です。職務に関して便宜を図るように依頼を受けて、それを承諾し、賄賂をもらっていたのかどうかを立証できるのかがポイントとなります。高橋容疑者は、これまでANNの取材に対して「五輪に関する働きかけはしていない」と主張していました。
一方、関係者によりますと、これまで青木容疑者は「高橋容疑者が“みなし公務員”にあたるとは知らなかった。だまされた気分だ」と話していました。実際に便宜が図られていたのかどうか。今後、特捜部は、押収した資料などを分析して、起訴に向けて捜査を進めるものとみられています。
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